からだにできものが見つかり、そのできものが悪性腫瘍の疑いがある場合、次のようなステップで診断から治療までを検討します。悪性腫瘍は手強い敵です。きちんと敵の正体を知り(診断)、どこまで敵が進んでいるか(転移の確認)、戦える状態か(全身状態の把握)を十分に把握した上で、最も勝算のある戦い方(治療法)を考えます。悪性腫瘍と知らず手術した場合、実は既に転移をしていたり、切除しきれなかったりと、後手後手になってしまうケースも少なくありません。
まずはきちんと診断することが大事です。細胞診、組織生検→病理検査にて、本当に腫瘍かどうかを診断します。細胞診や組織生検が困難な部位では、しこりの画像検査(エコー、CT検査、MRI検査など)によって、腫瘍の暫定診断をします。
多中心型リンパ腫の細胞診像
悪性腫瘍の場合、リンパ節や肺などに転移する可能性があります。また、腫瘍の種類によっては転移率が高い腫瘍、低い腫瘍があります。転移の確認は画像検査±細胞診にて確認します。
肥満細胞腫のリンパ節転移像
悪性腫瘍は中高齢の患者さんが多く、心臓が悪い、腎臓が悪いなど持病があるのは当たり前です。また、腫瘍によって引き起こされた、貧血、血液凝固異常、高カルシウム血症などの有無を確認します。それらをきちんと把握した上で、積極的ながん治療が可能かどうかを判断します。
がん治療にはがんそのものに対する治療と、痛みの緩和や栄養サポートを基本とした緩和治療という2種類の治療があります。がん病そのものに対する治療(手術、抗がん剤、放射線治療)を実施する場合も、実施しない場合も、いずれの場合でも患者さんの生活の質を向上させる緩和治療は必須だと考えています。
治療は、がんと闘う際に最も勝算がある治療法を考えます。もちろん、それらの治療にはある一定のリスクが伴います。得られる治療効果とリスクを十分にご理解いただいた上で治療を実施します。また、費用の問題やご家族の価値観の問題もありますので、がんに対する治療はしっかりとご家族と相談しながら決めていく必要があります。
様々な事情でがんに対する治療をしない選択肢もあります。その際は、決して無治療ではなく、緩和治療をいつでも提供できること、今後予測される症状や緩和治療のタイミングについてご説明いたします。
リンパ腫、肥満細胞腫、血管肉腫、メラノーマ、乳腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、組織球性肉腫、多発性骨髄腫、扁平上皮癌、鼻腔内腺癌、線維肉腫、心基底部腫瘍(大動脈小体腫瘍、異所性甲状腺癌など)、胸腺腫、胃腺癌、腸腺癌、GIST(消化管間質腫瘍)、肝細胞癌、胆管癌、脾臓の間質腫瘍、カルチノイド、腎腺癌、腎芽腫、副腎皮質腺癌、褐色細胞腫、移行上皮癌、前立腺癌、精巣腫瘍(セミノーマ、セルトリ細胞腫)、卵巣の顆粒膜細胞腫、未分化杯細胞腫、肛門嚢アポクリン腺癌、肛門周囲腺癌、甲状腺癌、上皮小体腫瘍、インスリノーマ、膵腺癌、髄膜腫、グリオーマ、悪性末梢神経鞘腫など
初診 1500症例以上
再診のべ件数 1万件以上
緩和ケアと看取り実施症例数 約500症例以上
獣医腫瘍科認定医
中野 優子 獣医師、医学博士
2001年 大阪府立大学 農学部獣医学科 卒業
2001年〜2006年 大阪市内の動物病院
2006年〜2020年 腫瘍専門の二次診療施設、日本小動物がんセンター(所沢)にて、犬、猫のがんの診断、ステージング、がん治療の原則と実際の病態を把握した治療プラン組み立て、薬物療法から緩和ケアまで幅広くがん治療に携わる
2019年 東京慈恵会医科大学大学院にて博士号(医学)を取得
2020年5月より林屋動物診療室どうぶつ腫瘍センター センター長就任